木村はるか

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親愛なる時代たちへ ライナーノーツ

脚本家としての私(森悠名義)にとっての、最新作「親愛なる時代たちへ」が絶賛稽古中です。私も時折稽古場に顔を出しては、さかいかな の真摯な演出と、それに応える俳優陣の一途な姿に胸を打たれております。今企画の主宰者 さかいかな や、その他出演してくださる役者さんたちも宣伝してくれていますが、登場人物の数人には「時代そのもの」を演じてもらっています。それぞれの時代たち…が、なにをどう語らうのか?それは、時に滑稽で、時に真剣で。気軽に楽しんでいただける要素も満載ですので、ぜひ劇場に起こしくださいませ!「昭和」が「平成」になった時、私は6~7歳。そしてこの2019年春、2度目の改元「令和」へ。人生でもう一度改元に立ち合うことがあるかどうか、先のことはわからないけれど、少女時代に突如起こった改元に比べると、今回の改元は「多感な時期を過ごした時代への別れ」と「新時代への期待」をハッキリ感じる節目でした。お正月でも世紀末でもないわけですから、今日とそう変わらない明日が来るだけかもしれませんけれど、みなさんはどう過ごされましたか?ともかく、この節目に乗っかって、ひとつの作品を書くことができ、とてもうれしく思っています。個人のアイデンティティの獲得や関係性の物語ではなく、今実際の社会に強く結びついた物語を生み出すこと、これは私にとって密かな夢でした。劇場に足を運んでくださったお客様に、上演中素晴らしいひと時を過ごしてもらうことは当然ですが、終演し、劇場から出た時、その目の前に広がる世界が、つい今しがた見た舞台とちゃんと繋がっていてほしい。現代と現在を生きる人々により密接した物語を書いてみたい、とずっと思っていたんです。今を生きる私から、同じように今を生きるみなさんへの「ねぇ、今回の改元どうだった?」劇作を通して、みなさんと語り合えたらうれしいです。

【4月出演舞台】ぶっくぶっくのご紹介

少々遅くなってしまいましたが😅来週に本番が迫った「ぶっくぶっく」のご紹介を、ここであらためてさせていただきたいと思います📖💖昨年2018年の暮れ、Pal's Sharer(ぱるずしぇあー略してパルシェ)の主宰 佐藤里真さんから出演のご依頼をいただき、ふたつ返事でお引き受けしましたっ笑里真さんは、クロジでこの数年演出助手を務めてくれている方。私の書いた脚本を舞台に乗せるために、たいへんお世話になっていましたし、是非ご依頼にお応えしたいという気持ちでした。…それに、私は、近年特に、自分の書いた作品を演じることばかりで、それはそれでとても楽しいのですが、未知の演出家や作家の現場に、ただ女優として関わってみたい!という気持ちも強くありました。ですから、里真さんからのこのご依頼はもってこいだったということです。自分の紡いだ言葉を演じるのではない、女優としての木村はるか。その姿を見ていただけることが、私にとっては、今公演の一番の目玉!!緊張もありますが、とても興奮していますっ私は舞台となる移動図書館『ぶっくぶっく』のカフェ担当 知愛(ちえ)さんを演じます。これまであまりやったことのないほんわか暖かい雰囲気の女性…たくさんの小道具を優雅に使いこなす様もお楽しみに!!😊

サラバ!SARAVAH東京

来月とあるイベントに出演します!平日夜のみの出演をひと月前にお知らせするという暴挙、ごめんなさい…(> <)どうか無理されないでくださいませm(_ _)mさて、今回私が出させていただくイベントは…??====================「演劇で検証、アナタのお悩み解決の夜」@SARAVAH東京2019年2月12日 (火)19:00 open/20:00 startAdv.¥2,500/Door.¥3,000※ご入場時に別途1ドリンク(600円)代をいただきます出演者:吉川純広、木村はるか、谷戸亮太====================内容は…まずお客様からお悩み相談を募ります。(リンク先に「質問箱」あり)イベント当日は、出演者である3人の役者がそのお悩みを解決するべく、当事者になって即興劇(!)を上演。というどヤバいものです(笑)あ く ま で も、このイベントの目的は『お悩み解決』。(精一杯やってみますが解決しづらいお悩みもきっとある)演技力を競ったり、物語を届けるような企画ではありません。ご来場のお客様には、そのあたりの緩さをご理解いただいた上で、お悩みが解決するかどうかを生暖かく見守っていただけたらと思います。吉川くんが打つうどんを美味しくいただきながら。大丈夫ですか?不安ですか?うん、もちろん私は不安ですよ?(笑)でも、吉川くんとも、谷戸くんとも、ずっとなにか一緒にやってみたかったので、当日はめいっぱい楽しみまーす!■会場:SARAVAH東京について会場は渋谷にある SARAVAH東京 というライブハウスです!お酒も飲めて、ご飯もつまめて、ライブや演劇などのパフォーマンスも楽しめる素敵なお店なんです。が、こちらのライブハウス、来月で閉めてしまうそうなんです。実は私とてもお世話になったお店でして…5~6年前、一人芝居~少人数の作品を年1本ぐらいがんばって作ってまして、それをここでやらせてもらってました。今の事務所に移ったばかりの時期で、自由にいろんな物作りができるのがとにかくうれしくて、ほんとに楽しい時期でした。大きな舞台や大勢が関わる企画と違って、陶芸みたいにこねこねこねこね、自分の世界を形にする大切さを後押ししてくれるありがたい空間、それが私にとってのSARAVAH東京でした。

2018年、どんな1年だったか。

2018年はズバリ、『夢、叶いすぎちゃった』一年でした。いいじゃんなにそれ自慢!?と思われそうですが、まぁ聞いてくれ。2018年のまだ初め頃、私はここ数年(なんなら10年)続けてきた、2つの大きな仕事を「終える(または休む)」決断をした。そのふたつとは、①Podcast「ひいきびいき」の番組終了②クロジへの脚本執筆と出演を今年はしないである。どちらも、本業以外で一番目立つ私のメインの活動、といえたかもしれない。これまでの数年を振り返っても、人生におけるこの2つの存在はとても大きい。幸いどちらに対しても、自分に嘘のない形でしっかりと区切りを付けることができたので、悔恨の類はないのだが、自分の中でここまで大きなふたつが一度にない一年となると…「そのかわりになにするんだろう?」という漠然とした荒野が見えた春。でも、それでよかった。あたりまえにあったものが、なくなる。スッキリ!するのかもしれない。寂しい、と思うのかもしれない。自分を見失うかもしれない。とにかく暇を持て余すのかもしれない。そんな予想をして、覚悟をして、どれも、楽しみだった。のに、のに、である。もっと空虚な一年をたったひとりで味わうつもりだったのに!!!夢100で主人公を演じさせていただき、北欧~東欧旅行にでかけ、念願だったTV番組のレギュラーナレーションを担当させていただくとになり、挙句の果てに、盟友あきやまかおると、演劇(に類する様々なパフォーマンス)ユニット「ハラムスカラム」の活動をスタートさせる。というギチギチ感。あの時、眼前に広がった荒野は秒で幻…で、ただただ忙しかったよーっつー話じゃなくて、このひとつひとつ全部が「ずーっと叶えたかった夢」だった、という話です。叶わなくてもいい、一生かけて追い続けてもいい、とさえ思っていたことばかりなのに、割と一度に叶ってしまって、正直ちょっとぼんやりしてました。

作家森悠による『幻獣』ノート

その時、外苑前すむぞうスタジオでなにが起きていたのか…受付を済ませ1階で待機させられる観客たち。時が来ると、選ばれた人間のみが「謎の液体」を飲まされ、全員揃って階上へと通される。これが『幻獣』の開演。粛々とした雰囲気で席に着く観客たち。ベールで覆われた向こうには二つの人影が見える。映像投影。今から始まる物語の「前提」が語られる。やがてベールが取り払われ、登場人物:姉妹のふたりが登場。幕開けは、意味深な文言の詠唱と儀式めいた踊り。それが済むと、姉妹は本を読み始める。「私たち、いつか世界を読み終えるかしら?」「それは、"終わり"を意味する。」独特のテンポで語られるポエティックなやりとりがしばし続き、やがて姉妹は一冊の本を興味深げに読む。それは「海の生物」について書かれた書物。現実世界の観客たちにとっては耳馴染みのある魚の名前ばかりだが…どうやら姉妹はそれらを知らないようだ。そう、彼女たちはずっとここに閉じ込められていて、外界については本を通してしか知る術がないのだ。彼女たちは、本から得た情報を頼りに、世界を推理している。ひとしきり会話が進んだところへ、闖入者の登場。「すいませーーーんヤマネコの運輸ですーー」この瞬間、ここまで構築されていた世界にヒビが入る。配送業の男性の登場によって、観客と姉妹の間に惹かれていたはずの境界線は取り払われ、姉妹は大仰なごっこ遊びを繰り広げる痛々しい成人女性に成り果てる。大切に作り上げた「世界観」を壊された姉妹(痛々しい成人女性)の怒りは激しく、配送業の男性に「罰」として、尋問を始める。タコ、ウニ、カレイとヒラメの違い、そして、クラゲ……あるいは、サーフィン。書物から得た知識を男性と答え合わせしていく姉妹。残念ながら姉妹の推理はことごとく外れているが、男性のおかげで姉妹は新しく正確な世界に触れることができ、姉妹の男性への気持ちは、いつしか怒りから感謝に変わっている。ここを去る男性に、姉妹から「丁重な見送り」と「お礼の品」…男性はこの場所を訪れたのとは違う扉の奥へと通され……しばしの間の後、男性の悲鳴が会場に響き渡る。姉妹は「この世界」の主導権を取り戻し、客席との間に引かれていたはずの境界線をこれみよがしに踏み越え、観客に問いかける。「本日お越しの方々の中からも数名、奥の間へご案内いたします…」姉妹は、階下で事前に「謎の液体」を飲まされていた数名を次々と選び出し、彼らを扉の向こうへと運ぶ。扉の向こうからは、次々と人間がなにかに襲われているかのような恐怖の叫びが聞こえる。彼らは、ひとり残らず「獣のようななにか」に食べられてしまったのか?いや、あるいはそれは現世からの救い?「やっとお腹がいっぱいだそうよ」「ほんとうに手のかかる子…」神聖な『幻獣』に襲われたらしき人間たちは、魂の姿になって、すむぞうスタジオのバックヤードツアーを終え、また元の席へ戻る。そしてまた世界は閉じる。姉妹は開演時と同じ空気感に戻り、再び彼女たちの物語世界に戻っていく…が、そこにはほんの少しだけ変化もある。彼女たちの世界を無理矢理にこじ開け、彼女たちに関わった配送業の男性が与えた知識は、彼女たちの世界を確実に更新しているのだ。『幻獣』は、そんな物語でした。なんの難しいところもない簡単なお話です。森悠がよく書きそうな話です。今回は、手の届く範囲のお気に入りアイテム(姉妹、本、ダークファンタジー、etc)を使って、演劇の構造をいろんな角度からみんなで眺めてみよう!という実験だったので、いわば私の書いた本は、その実験のための材料でした。個人的に画期的だった点は「木村はるかがやってみたいことのために、森悠が働いた」ということ。「木村はるかがやってみたいこと」と「森悠のすべき仕事」は必ずしも一致しません。これまではそれが普通でした。でも、今回のハラムスカラムでは木村はるかと森悠は乖離せず存在していたような気がします。それは私にとって、意外なほど心穏やかな時間だったのです。今回の、記念すべき初実験にご協力くださった被験者のみなさま。実験計画に、共感・協力くださったキャスト・スタッフのみなさまに、心より感謝いたします。ほんとうに、ありがとうございました!