「女の足の裏の話」②

①でも述べたが、女の足の裏にそのような硬い皮の滞りが発生するのは、大抵ヒールを履いてこのコンクリートジャングルを歩き回るのが原因である。

私もかつてはそうだった...
それは、私がまだ声優としてアニメーションへの出演を主な仕事としていた頃。
背の低い私は、男性キャストと同じマイクを使うため、いつも7~10cmのヒールを履いていた。
(それでも全然足りてないのだけど...)

しかし、ヒールを履くのは、そういった実用的な理由だけではない。ただ単に「格好つけたいぜ」というのももちろんある。
ヒールを履いて、実際以上に足を細く・長く見せたいわけだ。

その一方で、私は無邪気に散歩を愛しすぎてもいる。到底ヒールでは歩かない距離をのしのし歩き続ける。

「新宿なう。時間あるから恵比寿まで歩くお!」

だれも着いてきてくれないので、ひとりひたすら歩く。のしのし。

その結果...

(これからやや痛い話をしますよー!)

足指が靴中の狭いつま先へと押入れられ、全体が中心を向くように丸く変形する。
・足裏に硬い皮ができる。
・圧迫された爪が割れたり、二枚爪になる。
・小指がマメだらけになる。

ということになるわけである。

そんな私が、30代に突入する頃...
主な仕事のフィールドをナレーションに移したこともあり、ひとまず「ヒールを履かなければならない理由」はなくなった。
(ナレーションの収録は、ひとりでマイクの前にお座りスタイルで行われることが多いです)

「美しい足」や「かわいいお洋服」への自分の考えも自然に年を重ねた。

毎日高いヒールで歩くのをやめてほんの数年...
気付くと、私の足の裏の硬い皮は自然に解消されていたというわけだ。

今もヒールをまったく履かないわけではないけれど、「お散歩できる高さと構造」をよく考慮するようになったし、スニーカーやぺたんこの靴も愛用している。
当たり前だけど、スニーカーやぺたんこの靴は歩くのがとても楽で、いつまででも歩けるし、走ったりもできる。

体の短い私がみっともなくないように、スカートや靴下の丈を研究した。

年齢を重ねて、
美について妥協したのではなく、
むしろ美は...広がったように感じている。

相変わらず、オシャレはとても楽しいのである。

...

けれどその日、
つるりと柔らかになった足裏に気づいた私は...

20代の在りし日々、
ヒールに助けてもらって、
東京の街を、背伸びして、
格好つけて歩いていた自分を思い出し、
すこししんみりもした次第である。

おしまい。
猫の足裏はこんな感じでいつでも健やか。
ピンぼけだけど。

KIMURA HARUKA

木村はるかが140文字をオーバーする時。

0コメント

  • 1000 / 1000