マシュー・ボーンの「SWAN LAKE」

バレエを習い始めて、もうすぐ丸4年…
初めて、本格的なバレエ観劇をしましたーーー!

渋谷 Bunkamuraのオーチャードホールにて、
マシュー・ボーン(演出・振付による)

SWAN LAKE

いわゆる、

白鳥の湖

です!
古典!名作!スタンダード!
まさに初バレエ観劇に相応しい演目!
…なのですが、このSWAN LAKE、白鳥たちは男性ダンサーが演じているのです。

果たしてどんな物語になるのか?
初めてのバレエ観劇で、置いてけぼりにならないか?
など、期待と不安・緊張が入り交じる心持ちで会場に向かいました。

が、中休憩を迎える頃には、興奮と感動のみが私の体を満たしていました……

全4幕構成。
(前半1~2幕/休憩/後半3~4幕)

舞台美術
簡潔かつ、絵本のようなデフォルメ

演技
踊り以外も表現豊かで、ストーリー分かりやすい。
シニカルだったりコメディタッチもあり、現代的。親近感のわく人物描写。

振付
モダンで古臭くない。衣装もクラシカルかつスタイリッシュ。

これらによって、すんなり世界観に入っていけました。

演出家 マシュー・ボーンの手腕に唸るばかり…!!

そうして前半ですっかり物語に入り込めた私は、後半ではまるで感受性のタガが外れたかのように、登場人物たちの心情と行動に見入っていました。

3幕の舞踏会では、スワンのもうひとつの姿であるストレンジャーが突然舞踏会に現れ、その蠱惑的な魅力で人々を圧倒します。
ダンサーの色気はもはや悪魔的なほどで、完全に骨を抜かれました。

ストレンジャーの存在と振る舞いに追い詰められた王子の行動は、衝撃的で痛ましい。彼の孤独が彼をそうさせると思うと、とても悲しい。

そして、1幕から舞台を明るくしてくれていたファニーなガールフレンドに訪れる悲劇…
予想外に胸を突かれ、涙が出ました。

そこからの4幕、男性スワンたちの畳み掛けるような群舞は圧巻!美しさと恐怖、見ている私の体の中で感動が渦巻き、また涙になって零れていきます。
混乱のうちに物語は閉じていきました。
ラストはこの世のものと思えぬほど、美しかった。

美しさと恐怖と混乱で涙が出たのは、20代前半にPARCO劇場で見た「青髭公の城」以来でした。
以下は、物語について私個人の感想です。

失意の王子に生きる希望を与えたスワンと、舞踏会に現れ人々を魅了する蠱惑的な男ストレンジャーは、同じダンサーが演じる、表裏一体の存在。
物事の光と影の部分、その両方を表す存在は、様々な物語に登場しますが、王子のスワン/ストレンジャーに対する思いは明らかなのに対して、スワン/ストレンジャーの王子への思いははっきり語られません。
王子を救いもし、王子をドン底にも落としもする彼の真意は…?
と、つい考えてしまいます。
その不可解な点が、この演目の最大の魅力でもあると感じましたし、また一方で、スワン/ストレンジャーは自然や野生の象徴で、なにかの思惑を持っているわけではない。ただそれと行き会った人間のほうが勝手に、希望を見出したり、その魅力に絶望させられたり、翻弄されるのかも…と解釈することもでき、如何ようにも物語に思いを馳せられるこの余白が、もっとも気に入った点です。

KIMURA HARUKA

木村はるかが140文字をオーバーする時。

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